バリアフリーとは、高齢者や障害をもつ人の「バリア=不自由さ」を解消し、いつまでも自分の力で安全に、自立した生活を送れるようにする考え方です。人は誰でも加齢とともに、「自然な老い」の症状を意識するようになります。身体機能・感覚機能・生理機能・心理機能・生活構造と5分類でき、さまざまな症状が見られます。
一般的には「高齢者=60歳代から」と受け取りがちですが、体の「自然な老い」は40歳代から始まっています。たとえば、視力なら老眼の症状は40歳代から表れ始めます。そこで、まず日常生活で感じるバリア(不自由さ)を書き出す作業をしましょう。「テレビの音がよく聞こえない」「玄関の出入りが大変」など。それをもとに、バリアフリー対応がどの程度必要かを見極め、資金計画、新築か増改築かなどを設計者と話を進めていくとよいでしょう。その際は、「過保護になりすぎない」ことに注意し、また、「どこまで設備・器具を充実させるか」は、利用者本人の理解と判断で決定するとよいでしょう。
勿論ですが、このサイトで一押ししているアキュラホーム「超発電の家」も完全バリアフリーになっています。
高齢者が生活する部屋は、できるかぎり同一階に設置するすることが重要です。ここからは住宅を改修すると想定し、ポイントを見ていきましょう。ただし、利用者に何らかの症状があり、自立した生活が難しくなっている場合は、設計者や医療・介護関係者に相談するとよいでしょう。
バリアフリー住宅を計画する際の一番のポイントは、高齢者が生活する部屋はできるかぎり同一階に配置すること。それが無理な場合は、使用頻度の高いトイレは寝室と同一階に設けます。それ以外の部屋への移動は、将来に備えて手すりやホームエレベーターなどを設置できるスペースを見込んでおきます。全室に共通するポイントは次のものです。
・段差を解消する
・床面を滑りにくい材料にする
・手すり(手すり取り付け下地)を付ける
・室内での動線に合わせたスペースを確保
・冷暖房機器や換気設備を適切に配置し、部屋の温度差をなくす
・十分な明るさが得られる照明器具を設置
・色づかいを工夫して、段差をわかりやすく、室内は明るく感じられるようにする
・非常時に備えた避難口を用意する
◆扉の幅と手すり
扉は有効寸法で取り付け、手すりは取り付け位置に配慮すべきです。玄関扉や廊下など開口幅の有効寸法は、室内用車いすの幅が70㎝以下と考えると75㎝以上、できれば80㎝はほしいところです。この寸法は建具枠の幅ではなく、あくまでも建具を開けたときの有効幅です。扉のタイプは、開き戸(ドア)よりも引き戸や引き込み戸にすると、少ない動作で開閉浴室、玄関、脱衣室、階段で必要となります。手すりを取り付ける位置は、直立して腕を下ろした姿勢の手首の前後。床から75m程度の高さが目安です。利用者の身長によって取り付け位置が上下するので、実際に動作を行いながら適切な位置を探しましょう。
また、手すりには体重がかかるため、相応の下地が必要です。将来に備えて下地のみを施工する場合は、下地の幅を広めにとっておきましょう。用途によって、握りやすい太さや使いやすい型があることも忘れずにしましょう。
◆電気設備選び
照明は明るく、スイッチは用途に応じて使いやすいものを選ぶことが重要です。加齢に伴って視力が弱り、物が見づらくなるため、照明器具には明るさが必要です。均一な明るさがよいといわれますが、まぶしすぎるのは禁物。読書や細かい作業には、若いときのおおむね2倍の明るさが必要です。補助灯をプラスして手元を明るくしましょう。
階段や廊下、玄関の上がり口などを明るく照らす足元灯、停電時は懐中電灯として使える懐中電灯付き足元灯、人や温度の変化を感知して自動点灯・消灯するセンサー付きの照明器具など用途に合わせて選びましょう。また、照明器具や換気扇などを操作するスイッチは、器具の用途や使用場所に合わせて使いやすいものを選びます。さまざまな機能付きがあり、操作面が広く押しやすいワイドスイッチ、パイロットランプ(案内灯)付きスイッチは、オフの状態でも小さな灯りがつき、暗いところでも迷わず点灯できます。コンセントは、多めに取り付けておきます。扇風機など床において使う電気器具には、床用コンセントもお勧め。そのほか、トイレや寝室などには、呼び出し用押しボタンを取り付けると非常時にも安心です。
◆玄関
玄関にはベンチを設けると靴の脱ぎ履きが楽にできます。玄関への入口、エントランスは段差が出やすいところ。敷地に高低差がある場合は、低めの段差の階段にして手すりを。スロープを設けたり、将来段差解消機などを設置するスペースも確保しておきます。外灯のほかに足元灯があると段差がわかりやすく安心です。床面は、雨に濡れても滑りにくい素材を使いましょう。タイル張りの場合は、目地を浅く小さくすると杖や車いすの車輪がはまるのを防げます。雨や雪など天気が悪い日のことも考慮してポーチの屋根(庇)は深めにしておきます。
玄関の内部では、上がり框と土間の段差は大きすぎないか、玄関扉の開口幅は車いすでも十分通れる広さか、足元の段差がわかりやすいか、などがチェックポイント。段差が大きい場合は式台を設置したり、手すりを取り付けます。下駄箱を手がかけやすい高さにするのも方法です。さらにベンチがあると、靴の脱ぎ履きも楽にできます。玄関扉は開けたままにできる引き戸がお勧め。車いすでの出入りや荷物の搬入も楽にできます。開き戸なら扉が90度以上開くものを。開閉を緩やかにするドアクローザーを必ず付けましょう。
◆廊下・階段
廊下は有効幅に、階段は勾配に注意して安全に過ごせるようにしましょう。廊下に手すりを設ける場合は10㎝程度余分に見込んでおく必要があるので、廊下の有効幅は78㎝以上確保したいものです。これなら車いすも容易に通れます。また各部屋との出入り口に段差などがないように配慮しましょう。足元灯を付けるとなお安心です。
階段を考えるときは、まず勾配が急ではないかを十分確認します。安全のためにはぜひ手すりを設けたいものですが、その場合も昇降に支障のない幅を確保できることを確認します。また、階段の突端である段鼻に滑り止めを付け、明るさにも配慮が必要です。加えて、自力で階段を上り下りするのが困難になったときのことを考え、階段昇降機やホームエレベーターを検討してみるのもよいでしょう。寝室を考える際のチェックポイントは、収納は足りているか、トイレまでの距離が遠くないか、足元が冷えないかなどに注意しましょう。布団やベッドの脇は50㎝くらいのベッドメイキングや介助のためのスペースを確保しましょう。寝室では掃除や換気に加え、布団が干しやすいことも大切です。
◆リビングと水まわり
リビングは日当たりのよい場所に、キッチンは作業性を第一に考えましょう。リビングは一日の大半を過ごす大切な部屋です。家の中で最も日当たりのよい場所に配置し、日常の立居振舞がしやすいように家具の配置や高さを考えましょう。また、掃除や換気がしやすい造りにして、収納は多めに用意したいもの。採光と避難口の確保という両面から、はき出し窓をお勧めします。
キッチンは、作業性を第一に考えます。キッチンカウンターの高さは身長に合っていて使いやすいか、作業の手元が暗くないか、換気扇のスイッチに手が届くか、水栓金具は使いやすいかなどにも注意しましょう。調理や片づけを安全に無理なく行うために、座って作業ができるキッチンや車いすのままで使えるキッチンもあります。 洗面・脱衣室は、隕られた広さのなかで「身だしなみを整える」「衣類を脱着する」など動作の多い場所です。衣類や荷物の選別・収納がしやすく、明るい機能的な部屋にしましょう。寒さ対策の暖房器具やカビ対策の換気扇などが取り付けられるかも重要なチェックポイントです。鏡周辺の照明の明るさや、水栓金具の使いやすさにも気を配りましょう。
◆浴室・トイレ
浴室は心身ともにリラックスできる場所ですが、実は高齢者が最も事故を起こしやすいというデータがあります。安全対策を万全に整え、いつまでも快適に楽しめる空間をつくりましょう。出入り囗は有効幅を大きく確保し、段差を解消した3枚引き戸の製品も検討したいもの。浴槽は洗い場との段差を小さくした半埋め込み式に。洗い場から40㎝程度の高さなら、バランスを崩す危険も減ります。また冬場の浴室や洗面室は冷えやすいため、床暖房や天井から温風を吹き出す「暖房換気乾燥機」も検討してみましょう。安全のためには緊急通報用のブザーを取り付け、錠は外から解錠できるものを選ぶことです。
トイレは小さなスペースながら、一日に何度も利用する場所。いつも快適に利用するためには手すりや収納、紙巻器などの位置が機能的で使いやすく、床面が掃除しやすい材料になっていることも重要なポイントです。寒さ対策として暖房器具を設置することも考えてみましょう。浴室と同様、緊急通報用のブザーを設置したり、外から解錠できる錠にしておくことも大切です。
「風水」「家相」「方位」は気にしない・・・という人こそ読め!!
◎「お金」
バリアフリー関連は住宅設備などハード面だけでなく、融資や補助制度などのソフト面でも内容の進歩が著しい分野です。情報を整理して賢く利用しましょう。住宅支援機構の「フラット35」は、「優良住宅取得支援制度(フラット35Sとの「バリアフリー性能に関する基準」を選択すると、基本仕様よりも数年間、金利が優遇されます。これは、住宅性能表示制度の「高齢者等配慮対策等級(専用部分)」の「等級3」以上に適合していることが条件になります。また、自治体によっては、改修費用の融資制度や住宅ローン利子の一部を補給してくれる制度などがあります。事前に制度の有無や内容を問い合わせてみましょう。
ローンを利用しない場合でも、住宅の新築や増改築をする際には、事前に建設地の自治体の福祉課へ足を運ぶことをお勧めします。自治体が独自に行う補助制度や設備機器の取り付け位置に関する情報、バリアフリーの詳しい相談先の情報が得られることもあります。自治体によって対象者や条件が異なりますので、十分確認することが大切です。